サマー/タイム/トラベラー 新城カズマ, 鶴田謙二

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)

SFとは何かを真正面に描いたメタSF。

ほんとは”メタ”なんていう陳腐な言葉でこの小説を称するのは不本意ですが、それは僕の語彙のなさだとご理解ください。本書は内容が濃くて書評しにくいですね。僕の表現力不足を十二分に差し引いた上でこの書評をお読みいただければ幸いです。

さて、本作は第37回星雲賞受賞作です。賞の詳細についてはリンク先をお読みいただければ分かるとおもいますが、作家や評論家ではなくSFファンが選ぶ賞ですね。

僕が本書のことを知ったのは主に紅茶さんから熱心に勧められたからですが*1、他にもりえじゅんPodcastのじゅんさんも勧めていましたし、たしか文学賞メッタ斬りの大森望も勧めていたと記憶しています。各所で大絶賛ですね。

本書を開いてから気づいたのですが、表紙と挿絵は鶴田謙二ですね。彼は本人も想像力溢れるSFを描いていて僕は大好きです。今回は主人公達のけだるい雰囲気と彼の描く絵がマッチしていて、場面をイメージしやすかったです。

冒頭でメタSFと述べました。本作は幼馴染の悠有の時間跳躍に関する物語ですが、では”時間跳躍のテーマとは何なのか?”古今東西のSF作品を題材に主人公達はお遊びで議論し始めます。それが彼らの”暇つぶし”なのです。それはいうなればこの物語が何を描きだそうとしているのか、それを主人公達が議論するということです。まさに”メタ!”ですね。しかし、そうして物語が展開しないからといって決して退屈ではなく、そのSF論自体が、かなり読ませるものです。物理学に始まり生物学、経済学まででできて、その薀蓄はなかなか。

しかし、その大小さまざまな嘘を通じて描き出したいことは、とってもシンプルなことなのです。そのシンプルさゆえに、直接口にすると嘘になってしまうような…そんなシンプルなことを伝えるために著者は嘘をつき続けます。
うん、それがSFってヤツですよね!

徹頭徹尾、首尾一貫してSF。オススメですよ。

感想リンク

本や雲の向こう約束の場所などとも比較。納得の書評。

本作の語りについて

SFってなんなのか…など。

地図に注目

タイムトラベルもの全般

1巻だけですでに傑作

ミステリとして読むといまひとつ…?

かたりのまわりくどさ

まりおんさんも読んでいたかwオススメだそうです。

難しいネタがわかるともっとおもしろい?

よい本とのよい出会い。