“文学少女”と死にたがりの道化 野村美月, 竹岡美穂
- 作者: 野村美月,竹岡美穂
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2006/04/28
- メディア: 文庫
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ウパ日記さんで、パンチラという言葉が連呼されながら“文学少女”と穢名の天使の紹介がされていて、心惹かれました。やっぱ男はいつまでも少年の心を忘れちゃいけませんよね。
ん…誰か「パンチラと少年性は無関係です」って言いましたか?
そんなことはない、そんなことはないのです。
少年よ、あなたは知らないのです。
人がパンチラにどれだけ励まされ、人がパンチラにどれだけ癒され、人がパンチラにどれだけ賭けられるかを。
ただし、“文学少女”と穢名の天使は文学少女シリーズの4作目です。簡単にはパンチラにたどりつけないようですね。神よ!これが試練なのですか?
太宰治の人間失格を題材とした大変優れた小説
馬鹿みたいな紹介を書いてしまいましたが、この”文学少女”と死にたがりの道化は正直言いまして大変優れた小説です。死にたがりの道化でピンとくる方もいると思われますが、本作は太宰治の人間失格を題材に見事な構成がされています。
僕が太宰治を初めて読んだのは中学生の頃でした。図書館で本を眺めていて『人間失格』、このタイトルのインパクトに負けたんですね。読んでみると、それまでの文学というものへの印象を覆すインモラルな内容で、しかもなにか身につまされるものがありました。人間失格の後はすぐ斜陽に進みました。そして中原中也とかにもはまったりダメダメな路線を歩むんですよねぇ…。まぁなんにしろ太宰治は僕が物語を好んで読むようになったきっかけを作った作家で、個人的に強い思い入れがあります。
本作はライトノベルという枠のなかで人間失格のテーマをうまく消化しているので、エンターテイメントなのに深みもあります。ぜひ小中学生に読んでもらって、この作品から太宰治に興味をもって欲しいです。
遠子先輩がキャラである
ただ、少し不満なところもあります。遠子先輩がキャラであるところですね。とくに自分を文学少女と自称するのがいただけません。仮にも文学少女が自分のことを文学少女と呼ぶなんてことはありえないんですw。文学少女を自称するシーンはなかなか重要でシリアスなシーンなんですが、そんな恥ずかしい呼称を自称する人が何を言ってもだいなしになってしまいませんかねw。作者もその台詞で何かが台無しになることが分かっていて、それでもインパンクトが欲しかったんだと思いますが…。
この物語で遠子先輩の”文学性”が薄まると、先輩の文学論、文学愛が怪しくなってしまっていかんことになっちゃうんですよ。文学なんていうジャンルをコミカルに書くことには技量がいるんですね。たぶん。その辺をもうすこし気をつけてもらえるといいと思いました。
竹田さんが、
添田さんが、
驚きの表情で、遠子先輩を見つめる。
「きっきみは?」
震えながらつぶやく添田さんに、遠子先輩は毅然と答えた。
「”文学少女”よ」ああ、こんなときまでなにを言ってるんだか。
本文P168から引用
僕だったらインパクトは薄まるかもしれないけど
「太宰の小説を愛するものです」
としそうですね。でもそれも変っちゃ変かな。それだったらインパクトがあったほうがいいのかも。
ところで、僕は遠子先輩は人間だと思っているんですけど、本当に妖怪なの?あれ…?僕は読み間違えてますか?
まとめ
まぁ太宰を読んで共感できた人なら間違いなく楽しめる作品だと思います。
あれに共感できない人には人事かもしれません。その場合は単なる悪い意味でのライトノベルに映るでしょうね。