ファウスト vol.3

なんかみなさんちゃんと批評しているところ申し訳ないですが、僕はファウストvol.3には基本的には肯定しかないです。


まず佐藤友哉がわりと頑張っている。短縮版ってもとはあれより長いのかよとか思いますが、新現実とかファウストのvol1,vol2で書いていたものより面白くなっています。
どこにもいけないのはもういいよ。だいたいどこにもいけないなんてのでそう何度も何度も悩まれてもしょうがない。今回は自分以外の登場人物もなかなかたっていて、僕は今回つまんなかったら佐藤友哉なんてもう読まないって思っていたけど、ぎりぎり踏みとどまることにしました。
佐藤友哉は結局まとめて読まないと面白くないのかもしれない。最終的にどこに向かうのかはっきりしてからじゃないとうだうだしてばっかりだ。(うだうだしてばっかりという傾向の人がうだうだしないをやってみることを僕はおもしろいと思う。)、きっと今回は最終回にむけてある程度構成が見えてきたんじゃないかなぁって勝手に思う。連載1、2回目は結局どういう話にするのかあんまり見えてない気がした。新現実の短編もおもしろくないので佐藤友哉は不器用なんだなぁと思う。でも舞城王太郎とか西尾維新みたいに器用じゃなくてもいいんじゃないかなぁ。器用なほうがいいとは思うけど、佐藤友哉佐藤友哉が書けるものを書くのがおもしろいんじゃないか。


滝本竜彦もがんばっている。ネガティブハッピーチェーンソーエッジはファンタジーであんまりおもしろくなく感じたけど、NHKへようこそとECCOはファンタジーではない。ファンタジーを信じるとか信じないとかの問題を真正面から扱っていて、失礼かもしれないけど滝本竜彦の本人がすごくよくでてくるテーマだと思う。そうやって自分を削ってみせる態度はすごく好きだし、文章もきっとうまくなっていってると思う。すごくすんなり読めた。


西尾維新はすごいね。インタビュー読んで感心した。二作も載せているし、神業、職人芸だと僕も思う。戯言シリーズもあと三冊で終わるという話を聞いて、潔さと賢さを感じたし、西尾維新に関しては僕は言うことなしです。


奈須きのこもいいですね。今回はいつもの世界での話ではなく、心の悩みたいなテーマにしてちゃんとファウスト色の作品にしている。やっぱり売れている人は違う。僕は奈須きのこはこうやっていろんなものを書いてみて欲しい。いつもの世界観が読者によく受け入れられているからってそればっかり書く必要はないと思う。


元長柾木は名前も知らないかったけどなかなか面白かった。世界ってテーマをよく扱ってると思う。


原田宇陀児は今回唯一つまらなかった。ちょっと一人よがりすぎる。ああいう話はまとまりにくくてなかなか難しい。そのトリックだけマネしても僕はそのトリックを読みたいんじゃなくて、そういう難しい構造にしたときにそれをどうまとめていくのか、それで何を伝えたいのかってのが問題。小説は今回が初めてらしいのでもうすこしがんばってみて欲しい。


舞城王太郎はほんとおもしろくて特にコメントも思い浮かびません。芥川賞は結局とれなかったのかな?まぁそれでも好き好き大好き超愛してる。は買いますよ。