紫色のクオリア うえお久光

紫色のクオリア (電撃文庫)

紫色のクオリア (電撃文庫)

人がメカメカしくみえる女の子とその友人を扱った良いSFでした。

科学に関する雑学がよく出てきまして、そのあたりの敷居の高さが素人を拒むとかそういう議論がラノベサイト界隈では行われていましたね。
僕は理系な人間なんで科学に関することなんかはよく知っていまして、あんまりこの敷居の高さを実感することはできないのですが、自分の苦手な歴史ものに話に置き換えれば、敷居を感じる人の気持ちがわかるのかもしれません。

個人的には吉永ふみの大奥レベルだとかなり楽しめますね。やっぱり徳川とかそういう有名どころだっていうのが大きいかも。もっとマイナーな話だと確かに知識がなくて楽しめないってこともありそうです。

紫のクオリアに話を戻しますが、この小説のひとつのテーマというのは”自分の感じた気持ち、自分の感じたこと”を大切にするっていうことで、そのギミックとしてクオリアを用いているわけですね。ちょっと構造は違うかもしれませんが、とある魔術の禁書目録なんかでは量子力学を用いて、”いろんな可能性の中から自分が観測したものが真実になる”的な感じで超能力を正当化しているのに似ているかもしれません。パッと例は思いつかないですけど、この量子力学方式はよくあるような気がしますね。それにくらべるとクオリアというのは面白いオリジナリティのあるアイデアだと思います。

本の感想としては、身近な変な人レベルの話が壮大なSFに変わっていく様は非常に見事で僕はものすごく楽しめました。僕が著者のうえお久光が好きってこともあるのですが、それを抜きにしてもお勧めできる名作だと思います。